NASは、パソコンやクラウドストレージと同じ感覚でファイルを保管できるデバイスです。
小規模なファイル置き場として、またはファイルの共有場所としての使用方法は、多くのユーザーがNASに求めている主要な機能のひとつでしょう。
一方で、NASの機能はそれだけではありません。
QuObjectsを導入してNASをオブジェクトストレージ化することで、NASの活用シーンはさらに広がります。
この記事では、QuObjectsの機能について解説します。
QuObjectsとは?NASをS3互換ストレージに変える機能
QuObjectsは、ファイルストレージで活用されることが多いNASを、S3互換のオブジェクトストレージに変える機能を提供します。
一般的なNAS用途では、ファイルストレージのほうが扱いやすいと感じるユーザーが多いものの、NASはファイル置き場としてだけではなく、様々な用途に対応できるストレージ基盤として活用できます。
オブジェクトストレージ構築は一般的に、Amazon S3をはじめとしたクラウドが選択肢となりますが、QuObjectsを使用すれば、オンプレミス環境でのオブジェクトストレージ構築が手軽に行えます。
ファイルストレージとオブジェクトストレージの違い
まず、ストレージ技術にはいくつかの種類があります。
この記事では、ファイルストレージとオブジェクトストレージの違いに絞って、下記のポイントに分けて解説します。
- ファイルストレージの特徴
- オブジェクトストレージの特徴
それぞれ具体的に見ていきましょう。
ファイルストレージの特徴
ファイルストレージは、ビジネスやプライベートで使用する一般的なコンピュータで使用されているためイメージしやすい方式です。
データをファイルとフォルダーによる階層構造で管理するストレージ技術です。
WindowsやmacOSなどでパソコン内のファイルを使用する際に、フォルダーとその中にあるフォルダー(サブフォルダー)、そしてその中にあるファイル、という階層構造を持ちます。
階層構造を持つファイルストレージは、ユーザーが目的のフォルダーやファイルを見つけやすいというメリットがあるため、ビジネス・プライベートを問わず多くのシステムで利用されています。
一方、ファイルストレージはデータ量が大きくなるとファイルシステムのパフォーマンス低下を招き、アクセス速度が遅くなるなどの点はデメリットです。
オブジェクトストレージの特徴
オブジェクトストレージは、データをファイルではなく「オブジェクト」という単位で管理するストレージ技術です。
オブジェクトストレージは、ファイルストレージと異なり、フォルダー・ファイルという階層構造を持ちません。
各データはフラットなアドレス空間(階層を持たない構造)に配置されるため、目的のファイルへアクセスする際には、フォルダー階層をたどるのではなく、アドレス空間全体から目的のファイルを検索するという方法をとります。
オブジェクトストレージは、必要に応じてストレージを柔軟に拡張できる点から、増加し続けるデータを支えるストレージに適しているというメリットがあります。
また、階層構造が存在しないため、ファイル(データ)ごとに適切なメタデータを付与することで、迅速に目的のファイルを検索できる点にも強みがあります。
一方、一部のファイルシステムはオブジェクトストレージに対応していない場合があります。
また、オブジェクトストレージはネットワーク経由で利用することが多いため、ネットワーク速度がボトルネックとなり、アクセス速度の低下を招く可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
QuObjectsの基本機能について
ここからは、QNAP NASでオブジェクトストレージを構築する「QuObjects」の基本機能について解説します。
- S3互換APIによるアクセス
- データレイクや仮想化に適したストレージ
- オブジェクト保護機能
それぞれ具体的に見ていきましょう。
S3互換APIによるアクセス
QuObjectsはAmazon S3互換のAPIをサポートしており、データの読み書きだけでなく、バケットAPI(CORS APIを含む)にも対応しています。
これにより、QNAP NAS上に構築したオブジェクトストレージ領域に対して、S3と全く同じ作法でバケットの作成や設定管理が可能です。
S3を使用したことがあるものの、オンプレミスでの構築経験はないという担当者でも、S3と同様の操作感で、高度な設定を含めたオブジェクトストレージ環境を利用できる点が大きなメリットです。
データレイクや仮想化に適したストレージ
QuObjectsは、大規模なデータ活用やデータレイク構築に対応する、高速かつセキュアなストレージ基盤を提供します。
特にAIや機械学習(ML)用の学習データ蓄積において、オンプレミスならではの低遅延・高帯域なデータアクセスは大きな強みとなります。
また、VeeamやDataCoreといった主要なバックアップ・仮想化ソリューションとの高い互換性を備えており、仮想化環境における二次ストレージやバックアップ先としても、信頼性の高いパフォーマンスを発揮します。
オブジェクト保護機能
企業のデータ資産を守るため、QuObjectsは「バージョン管理」と「オブジェクトロック」による多層的な保護が可能です。
バージョン管理機能では、同一オブジェクトの履歴を複数保持することで、誤操作や不慮のデータ損失が発生した際でも、迅速な過去時点への復元を実現し、ビジネスの停滞を最小限に抑えます。
また、削除・上書きを物理的に禁止するオブジェクトロックにも対応しています。
ヒューマンエラーによる重要データの喪失を防ぐだけではなく、データの暗号化を狙う悪質なランサムウェア攻撃からもデータを保護します。
QuObjectsの導入手順と基本的な使い方
ここでは、実際にQNAP NASへQuObjectsを導入し、オブジェクトストレージとして利用するまでの基本的な流れを解説します。
①QuObjectsのインストール
まず、QNAP NASの管理画面(QTS / QuTS hero)へログインし、「App Center」からQuObjectsを検索してインストールします。
インストール完了後、アプリを起動すると、オブジェクトストレージ用のストレージ領域を設定する初期ウィザードが表示されます。
保存先となるボリュームや共有フォルダーを指定することで、オブジェクトデータの格納領域を確保できます。
②バケットの作成方法
QuObjectsの管理画面にアクセスすると、S3と同様に「バケット」を作成できます。
バケットとは、オブジェクトデータを格納する論理的な単位のことです。
「Create Bucket」から任意のバケット名を入力し、必要に応じて以下の設定を行います。
- バージョン管理の有効化
- オブジェクトロック設定
- CORS設定
用途に応じた設定を行うことで、バックアップ用途やデータレイク用途などに最適化できます。
③アクセスキーの発行と接続設定
外部アプリケーションから接続するには、アクセスキーとシークレットキーを発行します。
管理画面の「Access Key」メニューからユーザーを作成し、API利用権限を付与します。
発行されたキー情報は、S3互換アプリケーションの接続設定に使用します。
④S3クライアントからの接続方法
QuObjectsはS3互換APIに対応しているため、以下のようなツールから接続できます。
- Cyberduck
- AWS CLI
- Veeam Backup
- rclone
接続時には、以下の情報を入力します。
- エンドポイントURL(NASのIPアドレス)
- アクセスキー
- シークレットキー
- リージョン(任意)
設定後はAmazon S3と同様の操作感で、オブジェクトのアップロード・ダウンロード・削除が可能です。
法人利用で評価されるQuObjectsの強み
QuObjectsの導入は、企業のストレージ基盤の確立において様々なメリットがあります。
Amazon S3をはじめとしたクラウド環境への依存が課題となっている場合には、QuObjectsはS3と同一のAPIで動作するため、これまでS3向けに開発したアプリケーションやバックアップ設定などの「既存資産」をオンプレミス環境で活用可能です。
これにより、クラウド利用時に課題となるデータ転送コストやレイテンシの問題を解消できるほか、継続的なコスト削減にも繋がります。
また、データの性質からクラウド環境への保管が望ましくないなど、データの物理的な所在を自社でコントロールしたい企業にも有力な選択肢となるでしょう。
クラウドS3とQuObjectsの棲み分け
クラウドであるS3とQuObjectsの棲み分けについて、端的にポイントを整理します。
| 比較項目 | Amazon S3 | QuObjects |
|---|---|---|
| コスト | 月額料金+データ転送量など | 構築にかかる初期費用 |
| アクセス | インターネット経由 | ローカルネットワーク経由 |
| データの所在 | クラウド事業者 | 自社NAS内 |
| 拡張性 | プランに応じ拡張可能 | ハードウェアによる制限 |
| 利用シーン | Webサイトの画像配信、データ公開、遠隔バックアップなど | AI/MLデータ基盤、日々のバックアップ、機密ドキュメント保管など |
QuObjectsの導入を検討する際は、この記事で解説した内容に加え、上記の表を参考とし、自社にとって最適な選択肢を採用するのがよいでしょう。
S3とQuObjects、クラウドとオンプレミスは、どちらが絶対の正解という性質のものではありません。
自社の事業内容、コスト感、データ量、データの性質などにより使い分けることが重要です。
まとめ
この記事では、QNAP NASでオブジェクトストレージ構築ができるQuObjectsについて解説しました。
オブジェクトストレージ構築といえば、まずクラウドのAmazon S3を思い浮かべる担当者も多いでしょう。
しかし、オブジェクトストレージはクラウドで構築されることが多いものの、オンプレミス環境での構築も可能です。
自社の事業内容やプロジェクト内容に応じて、ストレージ基盤の最適な選択肢を採用するため、この記事で解説した内容を参考にしてみてください。
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