Wasabi Hot Cloud Storageとは
Wasabi Hot Cloud Storage(ワサビ・ホットクラウドストレージ)は、アメリカのWasabi Technologies社が提供する、高性能かつ低コストのオブジェクトストレージサービスです。Amazon S3互換の設計を採用し、既存のクラウド連携システムやNAS、バックアップソフトとの高い互換性を持ちます。以下の特長が評価されています。
1. 圧倒的な低価格
Wasabiは容量課金のみのシンプルな料金体系を採用。多くのクラウドサービスで発生する下記のような追加費用が一切ありません。
- データのアップロード・ダウンロード(転送)料金
- APIリクエスト料金
このため、長期保存にも日常的アクセスにも適したコスト設計となっています。
Wasabi Hot Cloud Storage では、課金対象となる容量は、保存されている実データに加え、消去したデータのうちアップロードから30日が経過していないデータも含まれます。
2.「Hot」=いつでも高速アクセス可能
Wasabiの“Hot”という名前は、頻繁にアクセスするデータでも低レイテンシで即時利用できることを意味します。
通常、クラウドストレージはアクセス頻度に応じて「Hot」「Cold」など階層が分かれますが、WasabiはすべてのデータをHot層として運用し、低コストのまま高いパフォーマンスを提供します。
3. 高信頼性・高耐久性
データ耐久性は11ナイン(99.999999999%)を誇り、地理的に分散した複数のストレージノードで冗長化されています。ハードウェア障害が発生してもデータを自動的に保護できる仕組みを採用しています。
4. セキュリティとコンプライアンス
Wasabiは、データ暗号化(AES 256-bit)、転送時のTLS暗号化、アクセス制御ポリシー(IAM互換)に対応。
また、ISO 27001、HIPAA、GDPRなどの国際的なセキュリティ基準に準拠しているデータセンターを利用しており、企業利用にも安心です。
5. S3互換APIによる高い親和性
Amazon S3と同じAPIを採用しているため、既存のQNAP/Synology NAS、Veeam、Commvault、Veritas、Wasabi Explorerなどの多くのシステムやアプリでそのまま利用できます。
6. 国内外のリージョン
国内では東京と大阪、国外ではアメリカやヨーロッパのリージョンを、お客さまの環境にあわせて柔軟にご利用いただけます。
利用シーン
法人データのバックアップ・アーカイブ
重要なデータをWasabiに保存することで、物理的な災害やシステム障害、サイバー攻撃からデータを保護すると同時に迅速なデータ復元を可能にします。 オンプレミス環境でバックアップ用にご利用のテープやHDDタイプのストレージ機器よりもはるかに高い信頼性を維持しています。下り転送料金が無料のため、バックアップデータのリストアに追加コストがかかりません。日本国内では東京・大阪リージョンがあり、用途に応じて使い分けることで遠隔のストレージリソースを小規模からご利用いただけます。統合的なDR対策を実現します。
災害対策(DR/BCP)用リモートストレージ
災害対策(Disaster Recovery)や事業継続計画(BCP)の観点から、企業のデータを安全に保管することは極めて重要です。Wasabi Hot Cloud Storageは、高い耐久性(11ナイン=99.999999999%)と冗長性を備え、地理的に分離されたデータセンターにデータを保管することで、地震や火災、停電などの物理的リスクから情報資産を守ります。オンプレミス環境で障害が発生した際も、クラウド上のバックアップデータを利用して迅速なシステム復旧が可能です。
映像・写真素材の保存・共有
映像制作やメディア業界では、4K・8Kなどの高解像度データを大量に扱うため、安全で大容量のストレージが欠かせません。Wasabi Hot Cloud Storageは、高速なアクセス性能と低コストの保存料金を両立しており、制作素材や完成データの長期保管に最適です。さらに、データ転送料が無料のため、外部スタジオやクライアントとの大容量ファイル共有も効率的に行えます。
Amazon S3互換APIに対応しているため、既存の映像編集ソフトやアーカイブシステムとの連携も容易です。また、イミュータブル設定により、データの改ざんや削除を防ぎ、著作権素材の保全やコンプライアンス対応にも有効です。Wasabiを活用することで、制作現場からポストプロダクション、配信・保存までの一連のワークフローを、安全かつ柔軟にクラウド化することができます。
医療・教育・自治体でのデータ保全
医療機関や教育機関、自治体では、個人情報や機密データを厳格に管理する必要があります。Wasabi Hot Cloud Storageは、高水準のセキュリティとデータ保護機能を備え、暗号化やアクセス制御により情報漏えいリスクを最小限に抑えます。HIPAA(医療情報保護法)やCJIS(米国刑事司法情報基準)などの国際的なセキュリティ基準にも対応しており、国内外の法令遵守にも配慮した設計です。オンプレミスに依存しないデータ保全体制を構築することで、公共性の高い組織でも安心して利用できます。
NAS・サーバーのクラウド連携ストレージ
Wasabiは、各種NAS(QNAP、Synologyなど)やサーバーと容易に連携できるクラウドストレージです。QNAP NASのHybrid Mountアプリ(無料)をご利用いただくことでNASをクラウドストレージのフロントエンドとして使用できます。容量不足のお悩み解消やリプレイス時の工数削減が可能です。
NASのバックアップ先としてWasabiを設定することで、ローカル機器の障害や災害時にもクラウド上からデータを復元できる堅牢な環境を構築できます。S3互換APIに対応しているため、多くのバックアップソフトウェア(Veeam、Acronis、Arcserveなど)やシステムとシームレスに接続可能です。また、Wasabiの特徴である「下り転送料金不要」「APIコスト不要」により、バックアップやリストア時の通信コストを大幅に削減できます。NASの容量拡張やリモートアクセス用ストレージとしても活用でき、オンプレミスの利便性とクラウドの柔軟性を両立します。
QNAP NASのHybridMountの仕組み
QNAP HybridMountアプリ は、NASとクラウドサービスを統合するために使用され、ローカルキャッシュを使用してクラウドへの低遅延アクセスを可能にします。容量が限られているNASは、クラウドストレージをマウントして NASのストレージ容量を拡張できます。この仕組みにより、NAS側にデータを蓄積させることなく、クラウド上のストレージへのバックアップが可能になり、キャッシュ機能により、ローカルでの応答速度と差のない速度でデータの読み取りが可能となります。フォルダー毎に、常にキャッシュを保存、最もアクセスの少ないファイルから削除する、特定のファイルから削除するといった、ポリシー(条件)を設定することによって、従来の運用方法を変えることなく、NASのディスク容量を効率的に管理できます。
ファイルサーバー内のデータは、キャッシュ領域がいっぱいになると、低優先度のデータから削除されます。その際、ファイル名・サイズ・日付などのメタデータは残っているので、ユーザーからは全てのデータがファイルサーバー内に保存されているように見えます。メタデータにアクセスすると、クラウドストレージ上のデータを読み込みます。
①ファイルを保存
②保存直後にWasabiにコピー
③容量がいっぱいになると、ファイル名・サイズ・日付などのメタデータのみ残し、優先度の低いファイルから削除(削除されるデータはあらかじめポリシー設定可能)
④アクセスするとRecallされる。頻繁に利用するデータのみ、ファイルサーバーにも保存。(保存容量の5~20%程度)
Wasabiご利用時の注意事項
最小保管期間ポリシー(Minimum Storage Duration Policy)とは
クラウドにアップロードしたオブジェクト(ファイル)には、最低保存期間(30日間)が設定され、その満了期間より前に削除、上書き、または他のストレージへ移動しても、プロバイダー側では「残り期間分の料金」を請求します。対象データは、すべてのオブジェクトで、バケット内のどのデータも例外ではなく、1ファイルごとに30日間の保持ルールが適用されます。
削除例:
1GBのファイルをアップロード後、15日で削除した場合 → 残り15日分も課金対象
1GBを保存し、30日を超えて削除 → 追加課金なし
課金対象となる容量計算について
Wasabi Hot Cloud Storage では、課金対象となる容量は、保存されている実データではなく、削除したデータのうちアップロードから30日以内のデータも含みます。
この仕組みは、Wasabiの「Hot Cloud Storage」が低価格を維持しつつも高性能なアクセス性を提供するために導入されています。
ユーザーが短期間で頻繁にアップロード・削除を繰り返すと、ストレージ運用コストが増大するため、それを抑える目的があります。
ご不明点や詳しい説明をお聞きになりたい場合はお気軽にお問い合わせください。
想定以上に削除ストレージが増える主な運用パターン
① 「ミラー同期」モードを使用している場合
| 状況 | NAS内でファイルを削除すると、Wasabi側でも同じファイルが自動的に削除される。 |
|---|---|
| 影響 | Wasabiの「最小保管期間(30日)」未満のデータが削除されると、実際にはデータがなくても30日分の保管料金が発生します。 |
| 対策 | 「同期」ではなく「バックアップ(追加コピー)」方式を選ぶ。または削除を遅延させる「バージョン保持(Versioning)」を有効にする。 |
② 定期バックアップで「世代管理」が短すぎる場合
| 状況 | 毎日バックアップを取り、古い世代を1週間で削除している。 |
|---|---|
| 影響 | 各バックアップファイルが30日未満で削除されるため、削除した分も課金対象となる。 |
| 対策 | 世代保持期間を30日以上に設定。 「差分・増分バックアップ」を採用して、毎回全データを再保存しないようにする。 |
③ テスト運用や一時保存にWasabiを利用している場合
| 状況 | バックアップ検証などで短期間(数日〜数週間)だけデータを保存して削除。 |
|---|---|
| 影響 | 削除データのすべてが最小保管期間に満たず、「消したのに請求が来る」状態になる。 |
| 対策 | 一時保存にはWasabiではなくNAS内ストレージを使用。 本番データのみWasabiに転送する運用に分離。 |
④ バックアップアプリ側の「同期ルール」設定が不適切な場合
| 状況 | QNAP Hybrid Backup Sync(HBS 3)で、誤って「ミラーリング」「片方向同期」を選択。 |
|---|---|
| 影響 | NASから削除したデータがWasabiでも削除され、結果的に短期削除扱いになる。 |
| 対策 | 「バックアップジョブ」モードで設定。 「削除を反映しない」「バージョン保持を有効」に設定する。 |
⑤ NASで自動的に「スナップショット整理」や「古いファイル削除」が動作している場合
| 状況 | スナップショットやバックアップ世代をNAS側で削除した結果、Wasabiの対応ファイルも消える。 |
|---|---|
| 影響 | ストレージ上では空き容量が増えたように見えるが、Wasabiでは削除分の課金が残る。 |
| 対策 | スナップショット・世代削除の周期を30日以降に設定。 Wasabi側ではオブジェクトロックやバージョニングを利用して削除を制御。 |
バケットの作成について
バケットは、APACリージョン(リージョン名が「ap-」で始まるもの)以外でも作成可能です。しかしながら、接続距離によるアクセス速度の低下や、各国のデータ保護法などコンプライアンス面への影響を考慮し、日本国内リージョンである「ap-northeast-1(東京)」または「ap-northeast-2(大阪)」のご利用を推奨いたします。
また、Wasabi Object Replication機能によるレプリケーション設定をご利用の場合、「ap-northeast-1(東京)」、「ap-northeast-2(大阪)」、「ap-southeast-1(シンガポール)」、「ap-southeast-2(シドニー)」の4拠点間でご利用をいただけます
契約の更新について
本サービスは、お客様からの解約申請およびアカウント削除が行われない限り、自動更新となります。契約満了前には、弊社よりメールにて更新のご案内をお送りしますので、必ず更新の可否をご返信ください。
特にご指定がない場合は、現行契約と同一の容量で自動更新となります。契約容量の増減をご希望の場合は、契約満了日の30日前までにご連絡をお願いいたします。自動更新時のご請求書は、更新日から1週間以内に発行いたします。
解約について
解約をご希望の場合は、契約満了日の30日前までに弊社営業担当までご連絡のうえ、お客様側で契約満了日までにWasabiアカウントの削除をお願いいたします。アカウントの削除が行われない場合、データが削除済みであっても自動更新扱いとなり、請求が発生いたしますのでご注意ください。
※契約期間中における、契約容量の削減や契約期間の短縮は承っておりません。
データダウンロード制限について
毎月の出力データ転送が、アクティブなストレージボリュームサイズを超えることが続く場合、サービスを制限もしくは一時停止される場合がございます。特に、外部公開リンク(パブリックアクセス)を必要とする運用を希望される事業者様は事前に弊社にご相談ください。
ご利用例:Wasabiに10TBのデータを保存し、毎月の請求サイクル内に10TB以上のデータをダウンロード(出力)した場合