QNAPのHigh Availability Managerは、QNAP NASを使って高可用性クラスターを構築するツールです。
この記事では、High Availability Managerの概要と設定方法について解説します。
High Availability Managerとは?
High Availability Managerの概要を、下記のポイントに分けて解説します。
- HA構成の基本
- High Availability Managerの役割
それぞれ具体的に見ていきましょう。
HA構成の基本
HA構成(High Availability構成)は、NASデバイスを使ってアクティブノードとパッシブノード(スタンバイノード)を同時に稼働させる構成です。
アクティブノードに障害が発生した場合に、パッシブノードが自動的に動作を引き継ぐフェイルオーバー構成となり、ダウンタイムを最小化します。
High Availability Managerの役割
High Availability Managerは、2台のQNAP NASを使ってHAクラスターを作り、管理するツールです。
High Availability Managerは、アクティブノードが基本的なデータ操作やサービスを管理しますが、パッシブノードがそれらの設定を連続的に同期させる役割を担います。
なぜHA構成が必要なのか
NASにHA構成が必要となる理由は「サービス(業務)停止のリスクを最小化する」ことにあります。
NASは単体のデバイスとして見れば、バックアップ、スナップショット、RAIDにより、データ喪失に備える仕組みが複数あります。
しかし、HDDに障害が発生したNASのデータを「あとから復元できる」ことと、「NASで実行しているサービスが停止しないこと」は同義ではありません。
現代ではNASは、簡易的なサーバーとして利用されている事例も多くあります。
また、業務システムの基盤となる仮想化プラットフォームとしてNASを活用している場合もあるでしょう。
このような環境では、あとからデータを戻せる、という問題ではなく「そもそもNASのサービスが停止しない」ことが重要となります。
HA構成は、NASの障害発生によるダウンタイムを最小化し、事業に与える損失を最小化することに貢献するのです。
High Availability Managerの設定手順
High Availability Managerの設定手順について、下記のポイントに分けて解説します。
- Step1 初期設定と環境準備
- Step2 クラスター設定
- Step3 High Availability Managerのインストールとクラスター作成
それぞれ具体的に見ていきましょう。
Step1 初期設定と環境準備
まずは、High Availability Managerを導入するための環境準備と初期設定についてです。
大前提として、High Availability ManagerはHAクラスターを構築するためのツールであるため、クラスターに参加する2台のNASが必要となります。
なお、対応NASデバイスにも制限があります。
QuTS hero h5.3.0 以降をOSとして搭載したモデルであり、最小8GB以上の総メモリー容量、また、サポートされているNASモデルであることを確認しましょう。
対応しているNASモデルについては、QNAPの「High Availability Manager」のページに記載があります。
QNAP High Availability Manager
Step2 クラスター作成
対応しているモデル2台を用意したら、次に各NASデバイスでクラスターインターフェースを構成します。
NASに管理者としてログインし「ネットワークと仮想スイッチ-ネットワーク-インターフェース」から設定します。
クラスター接続に使用するネットワークインターフェースの「構成」をクリックし、「IPv4」のタブから「静的IP」を選択します。
これにより、アクティブノード・パッシブノードの双方のNASの固定IPアドレスを設定します。
次に、ハートビートインターフェースを設定します。ハートビート接続では、クラスター内の2台のNAS間のダイレクト接続で、2台のNASのデータ同期を有効にします。
この設定は「ネットワークと仮想スイッチ-ネットワーク-インターフェースから設定します。
ハートビート接続に使用するネットワークインターフェース(クラスターインターフェースとは違うアダプター)を指定します。
「設定-IPv4-接続タイプ」と進み「DHCP IP」を選択します。
Step3 High Availability Managerのインストール・クラスターの作成
アクティブノード・パッシブモードとなる双方のNASにHigh Availability Managerをインストールします。
対応しているNASデバイスでApp Centerを開き、High Availability Managerをインストールします。
インストールが完了したら、アクティブノードとなるNASでHigh Availability Managerを開き「Create Cluster Now」のボタンをクリックし、2台のNASをペアリングします。
「クラスター接続(Cluster Connection)」の項目では、先の項目で設定した、クラスター接続に使用するネットワークインターフェースを選択します。
「ハートビート接続(Heartbeat Connection)」の項目では、先の項目で設定した、ハートビート接続に使用するネットワーク・インターフェースを選択します。
この後、パッシブノードNASの管理者アカウントの資格情報を入力します。
ここで、クラスター構成の要件が満たされているかが検証され、チェックが完了すると、クラスターIPアドレスの設定へ移行します。
なお、ここで指定するIPアドレスは、2つのNASデバイスのクラスターインターフェースIPアドレスと同じサブネットアドレスを指定する必要があります。
ここまでの設定が完了したら、クラスターの作成が開始されます。
HAクラスターの作成が完了すると、2台のNASはHAクラスターとして稼働・監視ができるようになります。
High Availability Managerが向いているケース
High Availability Managerを使ったHAクラスタリングが向いているケースについて、下記のケースに分けて解説します。
- 業務停止が許されないシステム
- 中小企業のBCP対策
それぞれ具体的に見ていきましょう。
業務停止が許されないシステム
現代のビジネス環境では、NASが単純なデータストレージではなく、業務システムやサービスを支えるサーバー基盤として活用されている事例も多くあります。
バックアップやデータ共有では、一時的な停止はいくらか代替手段が構築できる場合がありますが、業務停止が許されないシステムでは、ダウンタイムの最小化が重要となります。
この課題に対応するために、High Availability Managerによるクラスタリングは大きな役割を担うでしょう。
中小企業のBCP対策
災害対策や機器の故障があっても業務を継続できるBCP対策においても、High Availability ManagerによるHAクラスタリングは対策のひとつとなります。
データセンターを保有するような大企業や、本社と支店・支所などで遠隔地バックアップなどを実現できている規模の企業であれば別ですが、中小企業ではそこまでの業務インフラを確保できないケースもあります。
High Availability ManagerによるHAクラスタリングは、対応しているNAS2台でHAクラスタリングを実現できる点で、データセンターの構築や遠隔地拠点を作成するよりも現実的に、BCP対策が実現できる可能性があるでしょう。
まとめ
この記事では、QNAP NASでHAクラスタリングを実現するHigh Availability Managerの機能と設定手順について解説しました。
HAクラスタは、バックアップやスナップショット、RAID設定とは別に、NASの機能そのものを多重化し、冗長化する機能です。
もちろん、バックアップによるデータの多重化を行う重要性は変わりません。
しかし、システムやサービスのダウンタイムを最小化し、ビジネスにおける損失を最小化するための強力な仕組みとして、High Availability Managerは検討の余地がある選択肢といえるでしょう。
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