

こんにちは、テックウインド株式会社メディアチームです。
はじめに
WD(Western Digital)にはさまざまなHDDラインナップがありますが、そのなかでも企業・法人向けに位置付けられるのが「WD Gold」と「WD Ultrastar」です。両者は高い信頼性や長期保証を備えており、サーバーやストレージ装置、さらにはデータセンターの運用などにおいて主力となる製品群として知られています。しかし、どちらも同じWD製品であるため、「実際には何が違うのか?」と疑問を持たれる方も多いでしょう。
本記事では、WD GoldとWD Ultrastarの大きな違いを「ターゲット市場」や「対応フォーマット」「MTBF(平均故障間隔)」「キャッシュサイズとパフォーマンス」「製品バリエーション」「保証」といった観点から解説します。エンタープライズクラスのHDDを検討する際にどちらを選ぶか迷う場面は少なくありません。そんなとき、最終的な判断材料となるような情報を提供できれば幸いです。この記事を通して、目的に合ったHDD選びに役立てていただければと思います。
基本的な違い:ターゲット市場
まず、WD GoldとWD Ultrastarの最もわかりやすい差分は「想定するターゲット市場」にあります。WD Goldは「データセンター向け」と銘打たれているものの、データセンター内の標準的なサーバーや大規模ストレージだけでなく、中規模オフィスや企業のNASなどでも活用されるケースが多い製品です。いわば「汎用的かつ高信頼」なHDDとしての性格を持ち、どちらかというと幅広いサーバー環境やストレージ環境に適合しやすいという特徴があります。
一方のWD Ultrastarは、いわゆる「エンタープライズ」向けの大容量HDDとしての側面が強く、常時高負荷状態が続くようなサービスや高いスループットが求められる環境で真価を発揮します。連続的な大容量データの読み書き、耐久性がシビアに求められるアプリケーションなど、よりハードな使用条件を前提として設計されているのが特徴です。つまり、WD Goldは“広範囲な企業用途”で、Ultrastarは“よりヘビーな企業用途”で選ばれるイメージを持っておくとわかりやすいでしょう。
基本的な違い:フォーマットの対応
次に挙げられるのがフォーマットの対応です。WD Goldは基本的に「512e(512バイトエミュレーション)フォーマット」にのみ対応しており、従来型のセクタサイズをエミュレートして動作します。このため、多くの既存システムと広く互換性があり、特別な設定なしでも比較的簡単に導入できるのが利点です。
一方、WD Ultrastarは512eに加えて「4Kn(4Kネイティブ)フォーマット」にも対応しているモデルが用意されています。4Knは物理セクタサイズを4Kバイトとし、より効率的に大容量データを扱える可能性があるフォーマットです。OSやファイルシステムによっては4Kネイティブのほうが最適化される場合があり、ディスク管理効率やパフォーマンスの向上が見込めます。ただし、4Knに対応しているかどうかは各システムやソフトウェア、ファイルシステムの互換性も確認が必要です。そのため、Ultrastarのほうが先進的でさまざまな環境に合わせられる柔軟性を持ち、特に最新OSや特定の専用アプリケーションにおいて優位性があります。
基本的な違い:インターフェース
WD Goldは6 Gb/s SATAインターフェースのみのシンプルな構成で、PCサーバーやNASシャーシにそのまま装着できる汎用性を重視しています。一方Ultrastarは同じSATAモデルに加え12 Gb/s SASモデルも展開し、デュアルポートによるマルチパス構成やホットスワップ管理機構を活かした大規模ストレージ筐体で真価を発揮します。SASはコマンドキュー最適化と同時転送数の多さが特長で、仮想化ホストやビッグデータ解析などI/Oが飽和しやすい環境でも安定したスループットを維持できます。
また、同容量でもSAS版はやや高価ですが、バックプレーン側で帯域を共有できるため配線を簡素化でき、結果として運用コストと信頼性を両立できます。両シリーズはSATA/SAS混載システムでも互換性を確保できるため、用途に応じてSATAでコストを抑えるか、SASでスケールアウトを図るかが選択のポイントとなるでしょう。
基本的な違い:セキュリティ
セキュリティ面では、WD GoldがSecure EraseやSanitizeコマンドによるデータ消去など一般的なデータセンターレベルの保護機能に留まるのに対し、UltrastarはAES-256 SEDモデルやTCG準拠ハードウェア暗号化を備えます。これにより、ドライブを筐体から取り外しても暗号鍵なしでは読み出せず、万一の流出リスクを大幅に低減できます。
また、一部モデルはFIPS 140-2やISO/IEC 15408など政府レベルの調達で要求される厳格な認定を取得している点も特徴です。暗号鍵はパスフレーズのほかRADIUSやLDAPと連携した集中管理にも対応し、大規模環境での鍵ローテーションを自動化できます。総じて「機密性の高い業務にはUltrastar、標準的な社内サーバーにはGold」という棲み分けになりますが、運用ポリシー次第でSAS SED版を混在させる構成も選択肢となるでしょう。
性能と仕様:MTBF(平均故障間隔)
WD GoldとWD Ultrastarは、どちらもエンタープライズクラスのHDDに位置付けられるだけあり、MTBF(Mean Time Between Failures)が200万~250万時間という非常に高い数値で示されています。MTBFは、製品が故障するまでの平均的な稼働時間を示す指標で、24時間365日の連続稼働が求められるサーバー環境では重要視される要素の一つです。
もちろんこれは理論上の値であり、実運用においてはユーザーの使用条件や温度、振動環境などによって変動する可能性があります。それでも、一般的なコンシューマ向けHDDと比較した場合、エンタープライズクラス製品のMTBFが高いのは紛れもない事実です。この高いMTBFは、ミッションクリティカルな業務や大規模環境での運用において、大きな安心感をもたらします。「運用停止リスクをどれだけ低減できるか」という観点で見ても、両製品とも非常に優れた信頼性を持っているといえます。
性能と仕様:キャッシュサイズとパフォーマンス
MTBFに続いて、もうひとつ注目したい要素が「キャッシュサイズ」と「実際のパフォーマンス」です。WD GoldとWD Ultrastarはいずれも512MBという大容量キャッシュを搭載しており、表面上の数値だけを比較すると大きな差はありません。しかし、ファームウェアの違いや細かな制御アルゴリズムの最適化により、特に高負荷時の動作に差が生まれるケースがあります。
たとえば、サーバー環境では並列処理や連続書き込み/読み込み要求が多発します。このような場面では、ディスク自体の耐久性やキャッシュの制御方法、I/Oスケジューリングアルゴリズムなどがパフォーマンスに大きく影響を与えます。Ultrastarは高負荷を前提としたファームウェア設計がなされているため、連続的な大容量アクセスにも安定して応答しやすいのが特徴です。
一方、Goldもエンタープライズグレードであり、同じく高負荷に耐える設計ではありますが、より厳しい条件で稼働させることを想定するならUltrastarのほうが安心感があるという声もあります。もちろん実際の差は運用環境やワークロードの性質によって変わるため、一概に「Ultrastarのほうが常に速い」とは言い切れません。しかし、大量のデータを処理するようなシステムや、I/O要求が非常に激しい環境では、Ultrastarがより安定性や性能面でリードする傾向が多いです。
製品の構成とバリエーション:製品バリエーション
WD GoldとWD Ultrastarのもう一つ大きな違いは、「製品バリエーションの豊富さ」にあります。WD Goldは比較的シンプルなラインナップ構成をとり、容量や回転数、インターフェースなどが明確で、ユーザーが選びやすい仕様となっています。エンタープライズ向けとはいえ、データセンターや企業での汎用サーバー利用が中心であれば、そこまで細かいモデルの違いを求めるケースは多くないからです。シンプルでわかりやすいモデル展開は、導入のしやすさにも直結するといえるでしょう。
一方のWD Ultrastarは、容量や回転数、バッファサイズといった基本的な要素に加えて、細かいファームウェアバージョンやセキュリティ機能、暗号化機能の有無など、さまざまなバリエーションが展開されています。製品型番(パートナンバー)も複数存在し、型番ごとに微妙に仕様が異なることがあります。たとえば、特定のシステムと最適化されたモデルや、SASインターフェース対応モデルなども存在し、ユーザーの用途や環境要件に合わせて選び分けられるのが特徴です。
こうした細分化は一見すると煩雑にも思えますが、大規模なデータセンターや厳密なパフォーマンス要件があるシステムでは、よりニッチな要求を満たすバリエーションが求められる場合があります。あえて言えば、細かい選択肢がないと困るような“尖った用途”にはUltrastarが向いているともいえるでしょう。
製品の構成とバリエーション:保証
WD Gold・WD Ultrastarともに5年間のメーカー保証が付与されている点は共通です。長期的な運用を前提とするエンタープライズ向けHDDとして、5年間の保証は大きなアドバンテージになります。ただし、Ultrastarの場合はエンタープライズ設計の厳しさにより、実際に過酷な環境であっても安定稼働を維持しやすいと言われています。これは保証条件の問題というよりも、製品コンセプトや設計思想の違いと考えるとわかりやすいでしょう。どちらを選んだとしても長期間の保証が付くため、運用管理の面では安心感を得ることができます。
価格
価格面では、一般的にWD Goldがやや安価な場合が多いです。例えば、容量単価を比較すると大容量モデルでもGoldのほうが数%〜10%前後安い場合が多く、同じ容量を複数台まとめて購入する際には総額で大きな差が生じる可能性があります。ただし、WD GoldとWD Ultrastarは前述の通り用途や設計思想が異なるため、「どちらが安いか」だけで選択を決めるのは避けたほうがよいでしょう。高負荷環境や連続稼働が求められる現場では、コストよりも耐久性や安定性を優先すべき場合があり、実運用面を踏まえた製品選びが重要となります。
また、大量購入時の初期コストは見逃せないポイントではありますが、将来的な拡張性や運用コスト、故障リスクなども併せて検討することが必要です。加えて、一部の最新モデルや特殊容量帯では価格差が逆転するケースもあるため、常に相場をチェックしながら選ぶと良いでしょう。
結局のところ、両シリーズの違いは価格差以上に機能や性能の指向性にあるため、まずは自分の運用環境で求められる要件を整理し、最適な製品を選ぶことが望ましいでしょう。用途を明確にすることで、価格に惑わされずにより賢い選択ができるはずです。
まとめ
WD GoldとWD Ultrastarはいずれも高い信頼性と性能を備え、エンタープライズ領域で十分な実績を持つHDDです。大きな違いとしては、対応フォーマットや高負荷環境への耐性、さらには製品バリエーションの多さなどが挙げられます。データセンターや社内サーバーなどの“一般的な利用”が中心であれば、WD Goldのシンプルな選択肢が導入しやすいでしょう。一方で、より過酷な運用を予定している場合や、高いI/O性能と豊富なバリエーションを求めるならUltrastarがより適しています。自身の運用環境や要求されるスペックを踏まえ、最適なHDDを選択していただければ幸いです。
比較項目 | WD Gold | WD Ultrastar |
---|---|---|
ターゲット市場 |
- 主にデータセンター向け - 安定したアクセス性能を重視 - 幅広い企業・法人向けの汎用用途 |
- エンタープライズ向け大容量HDD - 高負荷環境に最適 - より過酷な運用を想定 |
フォーマットの対応 |
- 512eフォーマットのみ対応 - 既存システムとの互換性が高い |
- 512eおよび4Knフォーマットに対応 - 最新OS・システムで最適化しやすい |
インターフェース |
- 6 Gb/s SATAのみ - シンプルな接続性で汎用サーバーに最適 |
- 6 Gb/s SATAに加え12 Gb/s SASモデルも展開 - SASならマルチパス構成や大規模ストレージ筐体との親和性が高い |
セキュリティ |
- 基本的なSecure EraseやSanitizeコマンド対応 - SED(自己暗号化ドライブ)モデルは原則なし |
- AES-256 SED、TCG Enterprise/Opal準拠モデルをラインナップ - FIPS 140-2認定モデルなら高い機密性要件にも対応 |
MTBF(平均故障間隔) |
- 約200万〜250万時間 - エンタープライズ向けとして高水準の信頼性 |
- 約200万〜250万時間 - 過酷な環境での長時間稼働をより想定 |
キャッシュサイズ / 性能 |
- 512MBキャッシュ - 高速転送・安定したアクセス性能を備える |
- 512MBキャッシュ - 高負荷下での制御や耐久性をさらに強化 - 大量I/O環境でより真価を発揮 |
製品バリエーション |
- 比較的シンプルなラインナップ構成 - 容量など基本的な選択肢のみ |
- 多数のパートナンバー(型番) - ファームウェアや暗号化機能などで細分化 - ニッチな要件にも対応 |
保証 |
- 5年保証 - エンタープライズクラスとしては標準的 |
- 5年保証 - 過酷な使用条件でも安定稼働を目指した設計 |
価格 |
- 同容量帯では安価となるケースが多い - 大容量をまとめて購入するほどコスト差が大きくなる可能性がある |
- Goldよりやや高めの傾向がある - 最新モデル・特殊容量帯では価格が逆転する場合も - 「用途優先」で選ぶのが望ましい |
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