こんにちは、テックウインド株式会社メディアチームです。
Western Digital社の「WD Red Plus」は、高い耐久性と安定性という特徴を活かし、NAS向けとして設計・販売されているHDD製品です。
NASは基本的に24時間・365日に及ぶ長期間の安定稼働が求められるストレージデバイスであり、中小規模の企業にとってはデータ保存のインフラとして極めて重要な立ち位置となっている場合もあります。
NASに保存したデータがHDDの故障によって失われてしまうことは、多くのユーザーにとって最も避けたい事態のひとつでしょう。
この記事では、WD Red Plusの故障を防ぎ、長く安全に使うための運用方法やチェックポイント、注意点について解説します。
目次
WD Red Plusの特徴と用途
Western Digital社の「WD Red Plus」は、用途ごとにシリーズ化されているHDD製品のバリエーションの「Red」シリーズに該当する製品です。
Redシリーズは、主にNAS向けのHDD製品として設計・販売されており、この中でも以下の2つのパターンがあります。
- WD Red Plus…中小事業者などの中規模NAS用途
- WD Red Pro…企業・エンタープライズ用途
NAS向けとして設計しているRedシリーズは、パソコン向けのHDDと比較して長期安定稼働を重視しているという特徴があります。
WD Red Plusは、Redシリーズの中でも頻繁なデータ読み書きと安定性・信頼性を重視したモデルです。
年間180TBのワークロード対応、「平均故障間隔」を示すMTBFも最大100万時間と長く、また製品保証についても3年と、パソコン向けHDDのBlueよりも長く設定されています。
また、WD BlueなどNAS向け以外の一般的なHDDと比較すると、約2倍の600,000回のロード/アンロードサイクルを記録しています。
ロード/アンロードサイクルとは、HDDのディスクが回転を停止する際に、磁気ヘッドがディスク外の領域に退避し、再び読み書き領域に移動する一連の動作の回数を表しています。
つまり、WD Red Plusは理想的環境下での耐久性が通常の約2倍であると評価できます。
このほか、WD Red Plusの長期安定稼働を支える仕組みとして、アクチュエーターの動作を制御するファームウェアの存在があります。
WD Red Plusではファームウェアに「NASware 3.0」を採用し、磁気ヘッドの動作を適切に抑制することで発熱を抑えるなどの特徴があります。
ここまで解説したように、WD Red Plusでは短期的な高速動作ではなく、NASでの長期安定稼働を支えるHDDとしての設計思想があり、それを実現するための技術を満載した製品として展開されているという特徴があるのです。
WD Red Plusを長く運用するためのチェックポイント
ここからは、WD Red Plusを長く安全に運用するためのチェックポイントについて解説します。
- 電源の安定
- 冷却と清掃・エアフロー
- HDDの定期的な診断
- RAIDの構成 ※他の種類のHDDを混ぜない。振動などの影響
- バックアップ・スナップショットの作成
- 衝撃を与えない
それぞれ具体的に見ていきましょう。
電源の安定
内蔵HDDは、搭載されている機器の電源のオン・オフによって通電します。Red Plusの場合はNASの電源のオン・オフということになるでしょう。
HDDの動作が適切に行われるかどうかには、電源の安定が大きく影響しています。
たとえばHDDが読み書きを行っている最中に電源が突如失われると、記録部分であるプラッタに対して磁気ヘッドが適切に退避できない場合もあります。
想定外の電源ダウンが頻繁に起こる場合、プラッタとヘッドの摩耗が進行し、HDDの寿命が短くなる危険性があります。
パソコン・NASなどどの機器で使用するかに関わらず、安定した電源を確保できていることがHDDの長寿命化に繋がります。
電源系統の安定化やケーブル・コネクタの故障にも留意する一方、突然の電源喪失が起こり得る場合には、UPS(無停電電源装置)の導入を検討するのもよい選択肢です。
冷却と清掃・エアフロー
HDDはデータの読み書きの際に稼働する部品があります。読み書きの頻度が多くなれば、HDDの発熱を招きます。
一般的には、HDDの温度は15~25℃が適切な動作温度とされており、ノートパソコンなど部品が密集していて温度が上がりやすい環境であっても、60℃を超えると故障の危険が高まるとされています。
NASの場合には、HDDは密集して配置することが多くなりますが、ノートパソコンなどと比べて機器のエアフローをとりやすいよう考慮して設計されている場合が多いといえます。
しかし、構造に余裕のあるNASでも、HDDの温度が高くなってしまう場合があります。このような場合には、適切な冷却を行う必要があります。
HDDが高温となる原因の一つは、清掃の不足です。HDDそのものの清掃は一般的には不要ですが、HDDを搭載するNASの機器の排気口がホコリなどで詰まってしまい、想定通りの排熱ができなくなっている事例がよくあります。
また、直射日光が当たる場所や機器が密集している場所にNASを配置してしまっている場合にも、機器そのものが高温化し、内部のHDDも同様に温度が上がってしまいます。
NAS内部のエアフローだけではなく、NASから吐き出される空気のエアフローも適切に確保する必要があります。
なお、HDDやNASが高温化した際に、急激に冷却すると結露などの問題によりかえって故障を招く危険性があります。
「温度が上がったから冷却する」という発想ではなく、配置場所の工夫やサーキュレーターの配置などにより「安定して適温下で稼働できる場所に配置する」という考え方が重要です。
HDDの定期的な診断
電源や温度はHDDのハード面での故障対策となりますが、HDD内部のソフト面での故障にも備えておくことが、長期安定運用には欠かせません。
HDDの診断には主に「S.M.A.R.T」と呼ばれる診断方法が使用されます。S.M.A.R.Tでは、主に以下のような項目によってHDDの健康状態を診断します。
- 読み取りエラー率
- 代替処理された不良セクタ数
- 電源投入時間
- 温度
これらの項目により、HDDがどのような状態で稼働しているか、現在の値(Value)と最悪の値(Worst)、閾値(Threshold)、生の値(Data/Raw value)を比較してHDDの状態を監視します。
S.M.A.R.T.はHDDの状態を把握するための一つの診断指標に過ぎず、実運用では専用のチェックツールやアプリケーションを併用することが一般的です。特にNAS環境では、各メーカーが提供している専用の健康状態チェックツールを活用することで、より正確かつ詳細な状態管理が可能になります。QNAPの場合には標準でHDDの動作チェック機能があります。
WD Red Plusを使用している場合には、Western Digitalが公式に提供しているHDD診断ツールである「Western Digital Dashboard」や「WD Drive Utilities」の活用が選択肢となるでしょう。
RAIDの構成
WD Red Plusの主な活用シーンであるNASでのHDDの運用は、主にRAIDを構成して使用します。
特にデータの冗長性を高める目的では、RAID 1やRAID 5などが選択されますが、これらのRAIDレベルでは、基本的に同じ容量のHDDをペアで用意する必要があります。
WD Red Plusの安定性・耐久性を維持するために「他の種類のHDDを混ぜてRAIDを構成しないようにする」ことを推奨します。
WD Red Plus以外のHDDを混ぜないようにする理由は、WD Red Plusは振動抑制など長期間の安定稼働、複数のHDDを一箇所に集約して利用する用途に特化したHDDとして設計されていますが、そうでないHDDが混ざることにより、WD Red Plusの強みが活かせなくなる可能性があるためです。
最悪の場合には、WD Red Plus以外のHDDが生み出す振動や高温により、WD Red Plusの寿命が短くなってしまう危険性もあります。
NASでの活用、RAIDの構成には、同じWD Red Plusを複数台用意してストレージ環境を構築することが推奨されます。
バックアップ・スナップショットの作成
WD Red Plusを安定的に運用するために、電源・温度やエアフロー・S.M.A.R.T・RAIDなど様々なチェックポイントがあります。
しかし、それらの項目に日頃から注意をしていても、突然のHDDの故障を100%防げるわけではありません。
日常的なチェックや清掃を欠かさず運用しつつも、データの喪失には別の方法で備える必要があります。
代表的な手段がバックアップやスナップショットであり、特にWD Red Plusの主な活用機器であるNASには、NAS内のデータを他のNASやローカルストレージにバックアップする機能が備わっている場合が多くあります。
HDD単体の故障に備えることも重要ですが、NASそのものの故障、誤操作によるデータ破損など、データの喪失は複合的な要因で起こることを認識し、日常的なバックアップ・スナップショットの取得を行っておくことが重要です。
衝撃を与えない
WD Red Plusは高い信頼性を備えたNAS向けハードディスクですが、内部にはナノレベルで制御される磁気ヘッドやプラッターなど、非常に繊細な部品が組み込まれた超精密機器です。
そのため、取り扱い時には細心の注意が必要です。NASへの取り付け作業の際は、必ず平坦で静電気の少ない場所で作業し、HDD本体を落下させたり、強い衝撃を与えたりしないようご留意ください。
また、本体側面を強く押し込むなどの無理な力を加えると内部機構にダメージが生じる可能性があります。
さらに、NAS運用時にも環境面の配慮が重要です。過度な振動が発生する場所(スピーカーの真横、稼働機械の近く、揺れのあるラックなど)にNASを設置すると、HDD内部のヘッド動作に影響を及ぼし、読み書きエラーや寿命低下を招く原因となります。
十分な放熱が確保できる安定した場所に設置し、移動やメンテナンスの際も電源を切ったうえで慎重に扱ってください。
まとめ
この記事では、NAS向けHDDであるWD Red Plusを長く使うための運用方法や注意点について解説しました。
WD Red Plusは、優れた耐久性と安定性・信頼性を持つHDDです。
一方、そのような特徴を持つWD Red Plusであっても、適切な運用ができていなければ、故障のリスクは日々高まります。
また、故障に備えてデータのバックアップ・スナップショットの取得を行っておくことも、リスクヘッジとしては非常に重要です。
NASの導入、WD Red Plusの導入を検討している方は、この記事で解説した方法を参考に、WD Red Plusを長く活用するための運用方法を検討してみてください。
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