【HDD寿命を延ばすコツ】WD Red PlusとUltrastarのメンテナンス術
公開日: 更新日:2025.10.24 閲覧数 344 (月間7)

こんにちは、テックウインド株式会社メディアチームです。

企業にとって、重要なデータを保存しておくHDDは安定的な稼働が欠かせない機器です。

HDDの故障や動作不良が突然発生すると、データへのアクセスができなくなり、ビジネスの停止を招くなど、大きな不利益に繋がる危険性もあります。

HDDの突然の故障を予防するためには、定期的なメンテナンスや監視が欠かせません。

この記事では、企業・法人で主に採用される「WD Red Plus」と「Ultrastar」について、安定稼働と長寿命を実現するメンテナンス方法を解説します。

目次

HDDの寿命を延ばす一般的なコツ

まず、HDDの寿命を延ばす一般的なコツについて解説します。

  • HDDの寿命が減る仕組みを理解する
  • 温度と電源の安定化
  • HDDの健康状態監視
  • 物理的な衝撃の回避

それぞれ具体的に見ていきましょう。

HDDの寿命が減る仕組みを理解する

HDDには寿命があります。すべての機械には寿命がありますが、中でもHDDでは、ディスク・磁気ヘッド・モーターなどの部品の摩耗・消耗が直接的な寿命の要因となります。

HDDは通電によってモーターが回転し、ディスク(プラッタ)を回転させます。

プラッタは1分間に5,000回転以上の高速で回転しており、プラッタの上を「磁気ヘッド」と呼ばれる部品がなぞるように動くことでデータの読み書きを行います。

通電する限り回転するモーターやプラッタ、その上を精密に動く磁気ヘッドなど、わずかでも動作に誤差が生じると故障しやすい製品であることがわかるでしょう。

また、稼働する部品は、繰り返し動かすことによって摩耗していきます。

大きな衝撃や埃などの混入によって部品が破損することもありますが、日々の使用で少しずつ部品が摩耗して破損することも、HDDが故障する原因のひとつです。

HDDの寿命が減る、故障する仕組みを知ることが、寿命を延ばすための第一歩です。

温度と電源の安定化

温度の安定、電源の安定はHDDにとって寿命を延ばすための重要な要素です。

温度については、稼働部品を多く内蔵するHDDはもともと稼働中に温度が上がりやすい傾向にあります。

パソコンやNAS、サーバーなどに搭載する際は、機器内部の温度が異常に高くならないよう、冷却機能が搭載されていることがほとんどです。

しかし、何らかの理由で冷却能力が追いつかず、機器内部・HDDが高温に達してしまうと、部品の摩耗や劣化が早まり、故障を招くことになります。

また、HDDを動かすための電源の安定化も欠かせません。

HDDの動きにおいて最初に電気が通り動作するのはモーターです。モーターの回転が安定していることで、プラッタや磁気ヘッドなどの動きも安全な範囲に留まり、精密な動作が間違いなく行われることで、HDDの故障を避けられます。

しかし、電源からの電流が不安定だと、各部品が意図しない形で動作してしまい、必要のないところで周りの部品を摩耗させてしまう場合や、電流量による高温を招くこともあります。

このように、温度と電源を安定させることは、HDDの寿命を延ばすために欠かせないポイントのひとつです。

物理的な衝撃の回避

次に意識するべきポイントは物理的な衝撃の回避です。HDD内部ではプラッタの回転に合わせ、磁気ヘッドがプラッタ表面を移動しています。

HDDに書き込まれるデータはプラッタに記憶されますが、むき出しのプラッタの上を磁気ヘッドが行き来しているというのがHDD内部で起こっていることです。

磁気ヘッドが仮に、強い衝撃を受けてプラッタにぶつかる、擦るなどの動きをしてしまった場合、プラッタに記録されているデータが広範囲に影響を受け、データの読み書きができなくなる可能性があります。

また、磁気ヘッドそのものが破損してしまうと、プラッタは無事でもやはりデータの読み書きができなくなる場合があります。

HDDの健康状態監視

HDDの定期的な健康状態監視も重要です。HDDの健康状態監視には、HDD自身に自己診断を行わせる「S.M.A.R.T.」という機能を利用するのが一般的です。

S.M.A.R.T.は、HDDにおける健康状態を示す各種項目について、現在値(Value)・最悪値(Worst)・閾(しきい)値(Threshold)・生の値(Data/Raw value)という数値に基づいて健康状態を評価します。

S.M.A.R.T.では主に、データ読み込み時エラーが発生した数値、磁気ヘッドの移動時のエラーが発生した数値を示すリードエラーレート・シークエラーレート、データ保存領域である「セクター」に関する「代替処理済み・代替処理保留中・回復不可能」などの数値を参照して健康状態を評価します。

ユーザーは、S.M.A.R.T.の情報と合わせて日常的なHDDの動作・環境などを総合的に監視しながらHDDを運用するのがベストです。

WD Red PlusとUltrastarの特徴を整理

WD Red PlusとUltrastarは、HDD・SSD製品を製造しているWestern Digital社の製品です。
Western Digital社のHDD製品は用途により様々なシリーズを展開しており、「Red Plus」と「Ultrastar」はそのバリエーションのひとつです。

「Red Plus」は、主に個人~小規模企業・SOHOなどのユーザーに向け、NASなど長期間にわたって稼働するデバイスでの利用を想定して製造されているHDDです。

長期間の安定稼働を実現するための安定性・耐久性を重視して製造されています。

また、Ultrastarはデータセンターなどエンタープライズ用途での使用を想定し、高いMTBFによる厳しい環境での信頼性を重視したHDDです。

上記のように、Red PlusとUltrastarはいずれも、長期間にわたる厳しい環境での稼働を前提とした、耐久性・信頼性に優れた製品として販売されているという特徴があります。

WD Red PlusとUltrastarの寿命を延ばすコツ

Red PlusとUltrastarはいずれも長期間の安定稼働を目指して製造されているHDDですが、それでも寿命を延ばすためにユーザーが意識するべきポイントがあります。

  • RAID構成の最適化
  • 専用電源と冷却システムの活用
  • 監視ツールの導入

それぞれ具体的に見ていきましょう。

RAID構成の最適化

複数台のHDDを束ねて活用するRAIDは、NASやファイルサーバーでは頻繁に活用される技術です。

RAID構成そのものには、HDDを長寿命化するような機能はありません。

しかしRAID1やRAID5、6などの構成では、1台のHDDが故障しても、データ復旧の可能性が見込まれることによりデータの冗長性が確保できます。

また、単一のHDDに集中的にアクセスがある場合と比較すると、たとえばRAID0(ストライピング)構成などの場合、複数のHDDに分散して書き込むため、結果的に1台ごとのHDDの負荷が分散します。

ただし、HDDへの負荷が分散できることと、データの安全性は分けて考える必要があります。

RAID構成という点からHDDの寿命を考える場合、一般的にRAIDに参加させるHDDの調達時期がほぼ同じであり、RAIDに参加するHDDにほぼ均一の負荷がかかり続けることを意識するとよいでしょう。

同程度の負荷が同時期からかかり続けているHDDは、ある時期を境に故障リスクが高まり、複数台のHDDが同時に故障する危険性もあります。

「RAIDだから安心」と考えるのではなく、RAIDに加えているHDD自体の寿命を意識すること、RAIDの外にバックアップ用のディスク・領域を設けるなど、RAID構成でも故障リスクがあることを前提として、データの安全性を確保する施策が重要です。

どのRAID構成を採用するかに関わらず、HDDの長寿命化とデータの冗長性確保は両方検討する必要があるのです。

専用電源と冷却システムの活用

HDDの故障を防ぐためには、電源・電流の安定化と温度管理が重要であることは、先に指摘しました。

特にWD Red PlusやUltrastarを導入するような企業・法人などの商用利用においては、個人使用と比較してHDDの故障における損害が大きくなりがちです。

一方、企業・法人向けのIT製品では、電源や冷却などの部品・製品も選択肢が多く、また信頼性の高い製品も多くあります。

安定的な電流が確保でき、過電流を阻止する機能を持った専用電源や、急激な電源喪失を防ぐUPS(無停電電源装置)の導入は、HDDの故障を防ぐために採用しやすい選択肢です。

また、冷却システムにおいてもHDDが設置されているサーバールームなどの部屋そのものを冷却する空調、室内の温度を一定に保てるサーキュレーターの導入、機器にこもった熱を排出できる大風力のファンの導入などが放熱対策として有効です。

監視ツールの導入

HDDそのものの健康状態を監視する技術としてS.M.A.R.T.の情報は先に解説しました。これに加えて、S.M.A.R.T.情報をより視覚的に、直感的にわかりやすく表示するソフトウェア製品も現代では多くあります。

また、S.M.A.R.T.情報に加えて機器内部の温度、電流量、HDDを含めたシステム全体の稼働時間、ファームウェアのアップデート状況などを総合的に監視・管理してユーザーに通知する機能を持った監視ツール製品もあります。

法人・企業でWD Red PlusやUltrastarなどを採用する場面では、特に突然のHDD故障によるデータ損失を避ける必要がある場面が多いでしょう。

適切な監視ツールを導入することで、WD Red Plus・Ultrastarを監視し、適切なタイミングでの交換・メンテナンスを充実させることが故障対策の重要なポイントです。

まとめ

WD Red PlusやUltrastarは、一般ユーザー向けHDD製品と比較して長時間・長期間の稼働、高負荷状態での稼働を前提としたHDD製品です。

そのため、耐久性や安定性・信頼性に優れたHDDであることは間違いありません。

しかし、製品の仕様として信頼性の高い機器であったとしても、部品の摩耗や製品寿命は避けられません。

この記事で解説したような故障対策と定期的な監視を組み合わせ、適切なタイミングでHDDの交換・メンテナンスを行うことが、システム全体での安定稼働を支えるために欠かせないポイントであると考えるとよいでしょう。

WD Red PlusやUltrastarを導入したストレージ環境の導入を検討している方は、この記事を参考にしてHDDの長寿命化・安全性確保に取り組んでみてください。

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